THE NEW JAPAN

Yushi-dofu at TOFU HIGA

とうふの比嘉のゆし豆腐

Photography: Hinano Kimoto/Words: Kenji Hall

あっさりとした塩味の豆腐を味わう、石垣島のモーニング

道はバナナ畑の間をくねくねと続く。町の外れにあるこの風変わりな場所は、幹線道路からは隠れているが、石垣島で最も象徴的な朝食スポットだ。客たちが場所を迷うこともない。熱心な常連客は、開店前の朝6時半よりずっと前から列を作り始める。その頃には、 3代目店主である比嘉定二さんが工場に入って既に5時間近く経っている。 看板メニューは沖縄の定番家庭料理「ゆし豆腐」。軽く塩を振った温かい豆腐を煮込んだ一品だ。ここではゆし豆腐を様々な形で提供している。八重山そばに添えたり、ご飯の上に載せたり、味噌汁や澄んだ出汁仕立てなどだ。セットメニューには、豆腐作りの過程で出る、食物繊維とタンパク質の豊富な「おから」や、サービスの豆乳が添えられるものもある。 73 歳の比嘉さんは妻の明美さんと二人の娘、明子さんと優子さんと共に店を切り盛りしている。この商売は母から受け継ぎ、その母はさらに祖母から受け継いだ。祖母が約70年前に庭で育てた野菜と共に手作り豆腐を売り始めたのがはじまりだ。 2005年、比嘉さんは店を現在の場所に移転した。竹のすだれ、天井の扇風機、朝食客用の木製ベンチを備えたシンプルなトタンの小屋だ。「1日で大体 100食作ります」と明美さんは語る。

ゆし豆腐は、日本国内の他の地域で作られる豆腐よりも濃厚で塩気が強い。これは沖縄特有の豆乳の作り方に由来する。沖縄では、水に浸した生大豆を挽いて搾り、その豆乳を塩とにがりで煮ると、ゆるい豆腐の凝固物となる。「とうふの比嘉」では、ゆし豆腐を木型に流し込み、水分をほぼ絞って作られる、より固く締まった島豆腐も販売している。 比嘉さんは沖縄の伝統的な手作りの豆腐を継承している。その歴史は14世紀、島民が中国との交易を始めた時代に遡ると考えられている。店の簡素な工場では、季節や天候、加えて大豆の状態といった小さな変化が味に大きく影響する。明美さんによれば、こうした変化に合わせて調整することが、比嘉さんが常に美味しい豆腐を作り続けられる秘訣だという。 観光シーズンには長い行列ができるが、比嘉さんが営業拡大に消極的な理由は、この品質へのこだわりこそだ。とうふの比嘉を訪れる際は早めの朝 食を計画するといい。ゆし豆腐の定食は、たいてい午前9時半前には売り切れる。

Issue No.1

The Yaeyama Islands

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