THE NEW JAPAN

Kobo Taniike

工房谷池

Photography: Hinano Kimoto/Words: Kenji Hall

日常に寄り添う、環境の恵みをかたちにした器

石垣島西海岸の工房谷池のテーブルに、子ども用サッカーボールほどの巨大な軽石が置かれている。 2021年の海底火山噴火後、工房近くの浜に打ち上げられた黒い多孔質のだ。漁師は処理に困ったが、2008年に工房を開いた谷池祥依さんにとっては思わぬ贈り物だった。やがて彼女は軽石を細かく挽き、カップや皿、マグ、鉢の釉薬に試し始める。 谷池さんがつくる器は素朴で端正。毎日の食卓のために作られ、自宅周辺の風景が持つ色と質感を映し出す。山で採取した土塊を砕き、ふるいにかけて自ら粘土を調合。サトウキビ、島の木々、ヤエヤマヤシの葉を近隣業者が燃やした灰、そして時折浜に流れ着く軽石を使い、エメラルド、コバルト、灰褐色の釉を生み出す。

淡路島の瓦職人の家に生まれ、職人と窯に囲まれて育った谷池さんだが、 2000年に石垣へ移り現地の窯で修業を始めてから陶芸家の道を選んだ。ヤシとコーラルハイビスカスに囲まれた工房は、島に点在する約20の個人窯のひとつ。沖縄の陶芸史は6,600年前にさかのぼるが、八重山焼やパナリ焼はすでに途絶えている。谷池さんは言う。「ここでは多くの陶工が島外出身です。決まった伝統様式がないぶん、自由に試し、自分たちの好きなものを作れます」 新しい形や釉を完成させるまでには数か月の試行錯誤が要る。成形、乾燥、 800℃で素焼き、施釉の後、 1,230℃で本焼きを終えても、彼女は作品を「未完成」とみなす。「器は、使う人が料理を盛りつけて初めて完成するものだと思います」。

Issue No.1

The Yaeyama Islands

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